もう1つの国境と言っても、カナダ・アメリカ間にある国境はもう1つや2つどころではない。
これまでピースアーチ、パシフィックハイウェイ、アルダーグローブの3つを紹介したが、今回とり上げるのはPoint Roberts(Boundary
Bayが正式名)という国境だ。ここは数ある国境の中でも特異な存在である。まず下の地図を見て頂くと・・・。
ピンクの丸で囲んだ所がポイント・ロバーツである。そして1と番号が打ってある所はピースアーチだ。グレーの線が東西に引かれているのは国境線。
もうお気づきだと思うが、ポイント・ロバーツは半島である。つまり行き止まりなのだ。
カナダ側から国境を越えると、そこはもちろんアメリカだが、そこからはアメリカ本土の何処にも行けないのである。
住民はたとえアメリカ人であっても、例えば自国のシアトルに行く場合、一旦カナダに入ってからカナダの道路を走り、再び国境を通過しなければならない。随分と面倒なものだ。「もう一つの国境」に掲載した写真は全て、2001年12月3日撮影
アメリカ側の国境ゲートの様子。テロ以後はここでもトランクの中をチェックしている。ここは行き止まりの国境のため
、以前の審査はかなり甘かった。私はパスポート持参するのを忘れた
ことさえあったが、「買い物に行くだけならオーケー」と通過させてもらった経験がある(下の写真左)。国境ゲートを越えた所から南を望む。1本道の突き当たりは海になっているのが分かるだろうか?(下の写真右)
国境にあったサイン。WAとは
勿論ワシントン州を意味。Port of EntryのPort
とは、この場合は港のことを言っているのではない。PortにはGateway(ゲイトウェイ)のような意味もある。つまりアメリカに入るための入り口というような意味である。
ところで、ここから先の様子は写真でお見せすることができない。と言うのは、今日(2001年12月3日)アメリカの入国審査で引っかかってしまったのだ。
普通、日本人が陸路でアメリカ入国する場合は、イミグレーションでI−94Wという書類(細長いカード)を作ってもらわなければならない。これには6ドル徴収される。
I-94Wは90日間有効で、有効期限内なら何回でもアメリカに出入りする
ことができる。が、私はBorder
Crossing Card と一般には呼ばれている一種のビザのようなものを
持っていて、これがあればお金を払ってI-94の手続きなどしなくても、事実上フリーパスだったのである。
国境ゲートで私の順番が来た。いつものようにパスポートにあるBorder Crossing Card(アメリカのビザと同じようなスタンプになっている、現在ビザはスタンプから顔写真入りのシールに変更された=2003年8月現在)と
B1、B2ビザを見せる。が、審査官は私のパスポートを取り上げると「You have to go inside the building
」と言った。「え〜っ、何で?」と思ったが、イミグレーションの建物の中に入るのも久しぶりなので、「まっ、別にいいけど・・・」と小さな建物の中に入って行った。
中にはオフィサーが2人いて暇そうにしていた。メキシコまで道(I-5、Interstate5)が1直線に続くピースアーチの国境などとは違い、ここは地元住民しか利用しないので暇なんだろう。
オフィサーは「ボーダー・クロッスィング・カードは10月1日付け(2001年)で廃止になったので、日本人の私は
I-94Wカードを作らなければいけない」と言う。
ところが、私はUSドルを持っていなかった。
ただ写真を撮るために来ただけなので、お金などいらないと思ったのである。カナダドルの現金とクレジットカードは持っているが、USドルの現金でなければいけないと言う。
まぁ
実のところ、私は5ドルだけUSドルの持ち合わせがあった。いつもパスポートのカバーの裏にガソリンなどの非常用として5ドル札を挟んでいたのである。それを見つけた審査官は 「あと1ドルだよ、たったの1ドル!」とまるで商売人のような
ことを言うが、無い物は無いのである。「カナダ側に戻って銀行を見つければ、両替してくれるんじゃないのか?」とか面倒なことも言う。私は心の中で
「1ドル分、個人的に両替してくれないかなぁ?」
と呟いたが、たかがポイント・ロバーツである。別にお金を払ってまで写真を撮らなくてもいいや!という気持ちになり、そのままUターンした。
国境ゲートの写真は撮れたし、この小さな町には6年くらい前、度々来ていたので町の様子は大体分かる。ガソリンスタンドとスーパーがある程度の何も無い所なのだ。
アメリカ側ゲートの真横にあるカナダへの国境ゲート(写真右)。
アメリカ側ゲートと比べて、随分とクリスマスの飾り付けが目立っている。アメリカ入国のように厳しくチェックもしていない。 が、何を買って合計幾らの買い物をしたのか?を
必ず聞かれる。つまり、カナダ側はイミグレーションよりもカスタム(税関)の方に重きがあるようだ。
赤い止まれ(STOP)の標識の左横には、ピースアーチ国境にあるのと同じ石碑が建っていた。
ところで、何故こんな所を国境にしたのか?何でも政府の間でアメリカ、カナダの国境を北緯49度にしよう・・・という事で話が決った時、誰もポイント・ロバーツの存在に気付かなかったんだそうだ。はるか西の果ての小さな町は忘れられたと言える。
そんな小さな町ではあるが、写真を見てもお分かりのように車の出入りは結構ある。まず、そこに住んでいるアメリカ住民は国境を通過しない限り何処にも行けないという事がある。が、カナダ人(カナダの住民)
は何をしにポイント・ロバーツへ出かけるのか? 答えは買い物である。
買う物、それは主に食料品とガソリンである。
牛乳、バター等の乳製品、鳥肉、ジャガイモ等・・・アメリカで買った方が安い物が結構ある。
※
牛乳は1ガロン(4リットル弱)が1ドル90セント程度、卵は12個入りが約1ドル、バターはバンクーバーでの値段の半額位である。
また、ガソリンもアメリカの方が安い。
※ カナダを東西に車で移動する場合、カナダの道路を通らずアメリカに入ってアメリカの道路を走り、目的地の近くで再度カナダに入国する、という人も多い。
タバコ、お酒に至っては値段の差がかなり大きい。
※ カナダのタバコの値段は最低でも1箱5ドルはする(2003年8月現在、7〜8ドル)。対してアメリカでは2ドル台で買えるらしい。
為替レートの違いを差し引いても、アメリカでのタバコの値段は格安 と言える。ただし、この2品に限っては、カナダに持ち込む際に発見されると高い税金を取られるので、その場合はかえって高くつく。
うちも以前はよく出かけたものだ。それが最近行かなくなったのは、USドル高、カナダドル安のせいである。私がこの国に来た当時は
1USドル=1.3カナダドル程度であったが、現在(2001年)では1USドル=1.6
カナダドルになっている。つまり、USドルの100ドルはカナダでは160ドルの価値があるという事だ。
安いとは言ってもたかが食料品!「 カナダドル安の中、わざわざ30分近くもかけて行かなくてもいいや〜」
というのが本音である。
※ 実際、ピースアーチのアメリカ側にある町
Blaine(ブレイン)
では、何件ものガソリンスタンドが廃業に追い込まれた。24時間オープンだった大型スーパーも夜中の12時で閉まるようにもなったし、デニーズも閉店した。全て、カナダドル安に起因するカナダ人客の激変が原因である。
そして9月11日のテロ事件。
国境審査に時間がかかるようになり、ますます足が遠のくカナダ国民。逆にアメリカ人といえば、自国通貨高を利用し、バンクーバーに来る人が多いようである。
2001年12月07日 更新
2003年08月26日 更新
2003年09月05日 更新
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